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1:利久
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2011/02/21 (Mon) 02:50:21
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マジで成功させたい。
4回やって全部ミスってるから、5度目の正直!!
変な方向に曲げるのだけはやめて!!
ルールは特になし。
書き方は自由だし、連投もアリ
挿絵描いてくれてもいいんだよ。はい。
被った時は先に投稿した方の優先で
挿絵ある場合はそっち優先
あと安価で繋げてね>>1って感じで
まず、話を考えよう。なんかあったら言ってみて
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35:アリア ◆fr2FETe1Ug
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2012/11/11 (Sun) 02:10:55
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>>34
「はい?」
な、なんでそんなところから――
「なんでそんなところから、とでも言いたそうな顔だな」
「………………ご名答」
ふふん、と憎たらしい笑顔を保険医は俺に送ってくれた。人の部屋の窓(2階)に勝手に現れるわ、第一声が罵声だわ、ムカツク笑顔を向けてくれるわ、本当なんて性格の悪い女か。全く、昔のことなんて思い出すんじゃなかった。あの頃のアキ姉と、この目の前の保険医は別人だと思えてしまう。一緒だと思いたいんだけどな……。どう考えても別人なんだよ。
アキ姉はいつも俺を引っ張って遊びに連れてってくれる近所の気さくで楽しいお姉さんだったんだ。その時は、こんなに憎たらしいことも言わないし、優しいし、人付き合いも上手かったんだ。なのに、大学を卒業する辺りにがらりと人柄が変わっちまった。大学にアキ姉がいる間にはあんまり会う機会がなかったから、何がったのか全く分からない。
はぁ……昔のアキ姉には会えないのかねぇ。
「そんなに、昔が恋しいのか?」
別に、"恋しい"とかそんなわけじゃない。ただただ、懐かしく感じるんだ。少しの間とはいえ、会わなかっただけで人がこんなにも変わったら普通おかしく感じるよ。
「いや、ただアキ姉とあんたが本人かどうかを疑っててね」
「疑う? なぜそんなことになる。私は私だ。今も昔も、高枝晶だ。いくら歳を重ねてもそれだけは、寸分違わない」
「……わかってるよ。あんたがアキ姉だってことは、雰囲気でわかるよ。たとえ人当たりや言動が変わったところで、俺があんたを間違えるはずがないよ」
「嬉しいことを言ってくれるじゃないか。誉めたところで何も出ないぞ」
何も、ご褒美目当てで誉めちゃいないよ。俺はそんなに即物的じゃないさ。
「そうか、せっかく立花のスリーサイズをくれてやろうと思ったんだが」
「――っ」
おいおい、そりゃねぇよ。卑怯だろ。あんたがさっき言ったように、俺は思春期真っ盛りの男子だぞ。狼一歩手前、犯罪者予備軍、一つ間違えれば、退学になりかねないことを、昼夜問わず脳内で行っているこの俺に女子のスリーサイズだと? 何を馬鹿なことを。
――欲しいに決まってるじゃないか。
「…………」
ニヤリ。
その言葉が非常によく似合う表情。この保険医、本当に一般人か? どう考えても悪魔か、それに準ずる何かだろ。思春期男子の純情で不純な心をもてあそびやがった。こりゃ許されることじゃないぞ。
「お前の妄想のほうが、口外すれば許されることじゃないさ」
「生徒の身体情報を渡す教師の言うことじゃないな」
「まあな。つまり私をお前は同類ということだ。今も、昔もな」
痛いところをつくな。
「同類……ねぇ。昔から、あんたは俺とあんたを"同類"と言うけど、俺としちゃあ"同罪"の方があってると思うよ」
「確かに。"同罪"か……。言いえて妙だな」
そんな、すかした感じじゃ、誉められてる気がしない。皮肉なら聞く耳持たないぞ。
「誉めてるんだ。素直に喜べ。……そうか、同罪か」
「なんだか嬉しそうだな」
「ん? 表情に出ていたか? いや、嬉しいのは事実だ」
「なにを喜んでるんだか」
「同類よりも、同罪のほうが私たちの絆――繋がりは強いだろう? この世界、明らかに同類よりも同罪のほうが圧倒的に数が少ない。つまりそれだけ、私たちは世界という名の集合体の中で、ものすごく小さく、体中が常にくっついているくらい密な存在というわけだ」
と意味不明なことを申しながら、俺の近くへ徐々に徐々に近づいてくる。なんだこの野郎、人恋しいのか? なら、旦那探してからそいつに近づけ。あいにく今の俺は1人でも十分なんだよ。
「今の、か。昔のゲンキは常に人恋しかったからな。あの頃のお前は、それはもう目に入れてもいたくないくらいに可愛かったぞ。冗談抜きでだ」
そんなことを真顔で言うな。冗談じゃないのは分かってるよ。当時のあんたは、可愛くて仕方がない孫を異常なまでに愛する爺ちゃんと同じくらいに俺の面倒を見てくれたからな。
「それは置いといて。なんで俺の心を読んで会話してるんだ。せめて一度整理しなおして俺の口から聞けばいいだろう」
「それじゃ、お前は嘘をつくかもしれないし、大事なことを分厚いオブラートに包んで話してしまうだろう。私は、昔のようにお前とは隠し事なしで話し合いたいんだ」
「何を言うかと思えば。なら、学校ではなんで俺に隠し事するんだよ」
「学校では、私が教師でお前が生徒だからだ。その関係を越えることは、少なくとも学校では許されない。だから、こうして語り合おうとお前の家まで来ているんだ」
真摯にしゃべられても困る。
「だからって窓から来ることはないだろう。いつもはちゃんと、玄関から勝手に上がりこんでくるんだから」
保険医は、肩をすくめて、
「いいじゃないか。たまには、男女の中をよくするにはサプライズが重要だと言うだろう?」
などとほざく。
それは、恋人の場合くらいだろ。友人関係や教師と生徒の関係にそんなもの必要ないだろう。
「おいおい、私たちは確かに恋人じゃないが、少なくとも今は一般的な関係じゃないはずだ。言っただろ? 私たちは恐ろしいほど蜜な関係なんだ。サプライズの一つでもしてくれ」
そんなの、不機嫌な顔で言われても困る。
「考えとくよ」
俺は適当に返すことを即座に判断した。これ以上、このペースで話す気はない。
「で、なんの話?」
窓からやってくるくらいだ。よほど、おもしろい話だろうな?
「私のことを学校以外で"保険医"と呼ぶな。特に心の中でな。ちゃんと私の"晶"という名前から2文字以上使って私のことを呼べ」
なんともまあ……面倒で、女らしいのかよくわからないお話だ。
ただ、何となく心に響いたので、その言い分には応じることにする。
これからは"保険医"ではなく、単純に昔のように"アキ姉"と呼ぼう。その方が、なんだかしっくりくる。うん、そうだ。その方がいい。
学校では呼ばないけどな。心の中以外。周りの女子に聞かれてみろ、俺はすぐに高枝先生のファンによる陰湿かつアグレッシブな嫌がらせを受けることになるからな。
「わかったよ。アキ姉」
「分かればよろしい」
にこっ、と昔のような笑顔で答えてくれた。やっぱり、アキ姉はアキ姉だな。