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1:利久
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2011/02/21 (Mon) 02:50:21
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マジで成功させたい。
4回やって全部ミスってるから、5度目の正直!!
変な方向に曲げるのだけはやめて!!
ルールは特になし。
書き方は自由だし、連投もアリ
挿絵描いてくれてもいいんだよ。はい。
被った時は先に投稿した方の優先で
挿絵ある場合はそっち優先
あと安価で繋げてね>>1って感じで
まず、話を考えよう。なんかあったら言ってみて
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45:アリア ◇fr2FETe1Ug
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2013/05/24 (Fri) 12:19:53
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>>44
「これはどういうことだ!」
保健室の扉を開けるや否や俺は保険医に怒鳴りつける。保険医は俺の怒りなど知ったことではないように涼しい顔をしてもとの事務作業に戻った。
「無視すんな。どういうことだと訊いてるんだ」
「いいのか? お前の恥ずかしい写真について感想が飛んでくるぞ。早めに対処すれば被害は最小で済むと思うが」
「ふん。いらないミスリードするなよ。俺はあいつらのことを信用してるんだ。あいつらはあのメールをもらってすぐに返信したはずだ。保身のためにな」
なんという信頼だろう。我ながら感服するね。ここまで仲間のことを理解してるんだぜ。少しくらい躊躇ってほしいところだが、あいつらが躊躇うわけがない。特に葛城は1分かかったかさえ不安だ。あいつのことだ、保険医からのメールにテンションを上げて下げるのに5秒、写真を確認するのに5秒、返信内容を考えるのに10秒、打ち込むのに15秒、そして返信に5秒――計40秒。マジでやってそうな気がする。
「恐ろしいくらいに予想が当たってるな。その通りだ、私が送信した相手全員から30分以内に返信が来た。私のいうことに従順でいてくれて本当に助かるよ。まあ葛城の従順度にはさすがに少し引いたがな」
おいおい、この保険医に引かれるって相当だぞ。葛城よ、お前の恋は叶いそうにないな。だが、人生での間違いは修正できた。この女に惚れたことそのものが間違いだったと気づいてくれれば、それ以上のことはないだろう。
「葛城のやつ、32秒で返信してきた。恐ろしい男子だよ」
俺の予想を簡単に抜き去るとは……。大分早めに見積もったんだけどな。あいつの従順さは、金子の主人への忠誠心並みだな。まあベクトルが明らかに違うけど。
「まあ終わったことだ気にするな」
「気にするよ」
「安心しろ、この手のデータは30人ほどのサンプルがあれば十分に研究できる」
「研究ってな、おい……」
30人? 俺の友達ってそんなにいないぜ? いても20人がいいところだ。そりゃ仲良くしているやつなら結構いるが、連絡を取って休日遊んだりするやつはそんなに多くない。あれ? じゃあ残りの10人は誰?
「なんだ、疑問でもあるのか?」
「なあ30人って誰に送った。俺の友人関係者は20人がせいぜいだ。だとしたら残りの10人は誰なんだ?」
「それは私の友人と…………その手のプロだ」
「なんだよその手のプロって」
「ん? コスプレとか、女装のプロ。世界各国を飛び回っている日本人だ。その世界では名前を知らない人間はいないとされるくらいの有名人だ」
「へえ、なんであんたがそんなのと知り合いなのさ」
「ああ、昔スカウトされてな」
「レイヤーにスカウトとかあんのか?」
「ないよ。被写体としてってことだ。別にその世界に足を突っ込んだわけじゃない。そいつはカメラマンもやっているからな」
「それで、被写体になったのかよ」
「なんだ、気になるのか?」
「にやけづらでこっち見んなよ。鬱陶しい」
「そういうな、私のことを知ろうとするお前は好感が持てるからな。子供のころのお前はそれはさぞ可愛くてな。私の周りを――」
「関係ない話はそこまでだ。それで、被写体にはなったのか」
「なったさ、それでなかなかいい出来だったから今度の写真集のうちに数ページ入れさせてほしいと言われた」
「なんと、無愛想なあんたでもカメラ写りはいいのか。いやそれともカメラマンが良かったのか――おっと、その俺に飛んできそうな拳はおろしてくれ、冗談だよ。写真集の売り上げってどうなったんだ?」
「小さなイベント会場っていうのとそいつがすでに有名人だったのもあってすぐに完売だったそうだよ」
「へえ、それはすごいな。見てみたいものだな」
「無理だな。その写真集自体、そのイベント用のみの販売だったし部数もそんなになかったから手に入れるのは難しいぞ。それに数年前のモノだしな」
そうか、それは少し残念だ。保険医はニヤニヤと笑っているがその写真集があれば、こいつのこの表情も凍りつくだろうに。確かにイベント物は手に入れるのが難しいだろうな。ネットは保険医が手回しをしてそうだしな(なぜだか知らんがこいつのことは検索しても名前占いくらいしかヒットしない)。俺にその手の知り合いがいるわけでもないしな。
「まあ、もしお前があの写真集を手にすることがあれば、気を付けるといい。私はいつでもお前を抹殺するからな」
「その表情で物騒なことを言うな。余計に怖いよ。第一、心配しなくてもあんたが手に入らないといってるんだ。たぶん大丈夫だろ」
「そうだな。唯一の問題は私に執着する人物の存在だ。私の弱みに付け込もうとして必死に探すかもしれない」
「執着されたり根に持たれたりすることをしたって自覚はあるんだな」
「そのくらいあるよ。そうでなきゃこんな性格やってらんないよ」
「自分で言うなよな」
そこで俺と保険医は笑いあった。なんだかんだでこいつとの会話は楽しいと思う。ああ、こんな時ってなぜかろくなことにならないよなぁ。
なあんて思っていると、保健室のドアが開いた。ドアの隙間からは葛城が現れた。
「おお田幡、ここにいたか。……あ、こんにちは高枝先生」
「おいおいこんなとこまで俺を探す必要があったのか?」
「ああすぐに訊きたい――問いただしたいことがあったから」
「いやに真剣な目だな……。で、何」
「お前、高枝先生と昔からの付き合いだろ? だったらこれは先生かなぁと思ってさ……」
保険医の表情が曇った。葛城が鞄の中から取り出した雑誌くらいの本――いや、これは分厚いが写真集か。表紙に何かの格好をした人間が写っている。
「このコスプレ本なんだけどさ、昨日隣町の古本屋によってたら偶然手に入ってさ。このレイヤーが有名人でさ、あそこメンバーから確認くらいはしとけって言われたから買ってみたんだけどさ」
「は、早く本題に入ろうぜ」
保険医の目が鋭くなるのがわかる。俺の背中にぐさりと刺さってるんだけど。痛いからやめて。
「そうだな。それでこの最後の『小生の選ぶ次世代レイヤー』っていう特集ページのさこれなんだけど……」
「ん? これか……」
俺が確認しようとした、その時――。
「写真集の学校への持ち込みはいかんなぁ……」
どすの利いた口調が俺の後ろから聞こえてきた。と思うと俺は横に飛ばされていた。その前の一瞬だけ写真を確認したが――顔だけしか見れなかったが、たしかにそれは保険医だった。
「……葛城。コロス」
逃げろ葛城。そいつはお前の知る保険医じゃない。俺もガキのころに何回かしかお目にかかったことのない、高枝晶の恥ずかしがった姿だ。極度の恥ずかしいことがあると相手を殺しにかかる、そんな物騒な性格を保険医――いやアキ姉は持っている。ただ、俺以外は記憶と意識を飛ばされるから誰も覚えてないんだけどな。
というわけだ。逃げろ葛城。今回のは今までの比じゃなさそうだ。マジで死ぬぞ。
……葛城、お前はいい奴だったよ。さらばだ。
そして、乱心した保険医は葛城へと飛び掛かった――。